……で。

「なぁてっしー、俺様アイツに熱い目で見られてるvv」
「なっんでだよ!!!」
「……アホウ」

男は怒って怒鳴り勅使川原は管原の脇腹を重く小突いた。


「クソッ」

なんなんだこいつらと悪態を付きながら、男は逃げていく。


「……いやー身体大きいとそれだけで相手は逃げ出しますからね。便利便利」

「違う、なんか違うぞ管原」

ハハハと爽やかに笑う管原とは真逆の顔をしている勅使川原。


一悶着あったが一階の状況よりは余裕を持って、二人は周囲を探索していた。

管原なんかは入り口や廊下の豪華さやらに目を見張って黒川邸を感嘆しっぱなしである。
「有るところには有るもんだなー、金」


彼らもここへ目的があって来た。


階下からは相変わらず騒がしい喧騒が聞こえる。



「しかし……日堀さんもあれだな。監視はしないとか言ってきっちり見張り置いてるからな」

苦笑めいて管原は更に自分の後方を見やる。


明らかに警官らしき服装を身につけた男が、事務的に立っていた。

勅使川原も彼を一瞥し口を開く。
「当然だろう。こんな時に俺達の言い分をまともに信用していては、大臣も務まらない」
「ま、日堀さんも馬鹿じゃないって事か」


……先程スラムで日堀がこの長身の男に言いくるめられた手前、結局人員を割いてでもこの研究員二人の監視をせざるを得なくかった。

管原は『調べるだけだ』と言ったが、それを鵜呑みにする現場総指揮官などいるはずがない。

「あれたぶん警部補クラスだぜ。じゃないと監視に一人ってのは心もとない。俺らから一度も目離してないしな」

「ああ、だがこれではやりにくいのではないか?おまえさっき大臣に、黒川邸の物は持ち帰ったりはしないとか言ったじゃないか」

「嘘も方便だっ」

「でもあれじゃ、アレを持ち帰るところを見られるかもしれん」

勅使川原の指摘に管原はむぅ、と唸る。
そして空笑いをしながら。
「ま、なんとかなるだろ!大丈夫だいじょーぶケースバイケース☆」

色々不安が残る発言を飛ばしながら、二人……もとい三人はとある部屋の前に行き着いていた。