トリガーにガチリ、と指が掛かる。
咲眞の持つ紀一の銃は、狂う事なく紀一の額を狙っていた。

「ま、待て咲眞!!」

咄嗟に声が上がり、麻痺した足で自分を動かす。

既に足の感覚はない。
それはそれで好都合だ。
拜早は止まりかけた血をまた吹き出させながらも咲眞を背後から抱き止めた。

「! 拜…っ」

「咲眞、止めとけ!」

後ろから手首を掴まれ銃の軌道が逸らされる。

「…、よく動けるね、大丈夫なの」
「知らね…てかおまえも」

掴んだ咲眞の肩から妙な感触がした。

肩口が破け、下から布が見えている。
さっき別れた時にこんなものは無かったはずだ。

「黒川か!?」
「まぁね、でも掠っただけ…」

咲眞は肩の傷を適当な布で処置していた。
もう血は流れていない様だが、固まった茶色の後が残っている。


「ぁ……ぁ……」

へたりと茉梨亜は座り込んだ。

咲眞が来て…拜早が居て……

紀一が殺されかけている?


「ま……待って」

小さく茉梨亜は呟いた。


「ねぇ茉梨亜」

紀一を見据えたまま、咲眞は口を開く。

「冗談だよ?」


「…!?」

見開いた目はもう、涙で視界が朦朧としていて。


「…咲眞」

拜早がぽつりと。


「僕はね、茉梨亜が…例え黒川に抱かれても、こどもができても、茉梨亜が茉梨亜でいてくれたらいいんだ」


「……っ」


「それで無事に生きていてくれたらいい」


咲眞の冷静な声色で。

昔みたいな。

安心出来るその声で、その笑みで。




「う……うぅん」

それでも。少女の口から遠慮がちに出たのは否定だった。


「わ、私は殺されるべきなの……分かってるから……生きたいなんて、もう言わないから……っ」


そこで小さな驚きを示したのは咲眞の方で。

体勢そのまま思わず背後の拜早を横目見る。

「…茉梨亜は何を言ってるの?」

「…俺らが茉梨亜を消しに来たと思ってるらしい」


それを聞き、咲眞はぱちくりと目を瞬かせた後…