「それでいいのか!?おまえも黒川に手ぇ付けられたんだろ!?それでこんな格好してんだろ!?振り回されてばっかで……それでほんとにいいのかよ!!」

乱れた白髪の奥、茶の瞳が峯を睨む。
峯はそれでも引かなかった。

「構わないわ!!黒川様の傍に居られるだけで……」

  『今日からここが君の家だよ』


「アンタみたいな子供には分からないわよ!!」

  『私を守ってくれるかな?』


「初めて人に必要とされたの!だから裏切るわけにはいかない!!!」

振り被った峯の張手が、拜早の左頬に響いた。

――痛い、しかし、拜早は身じろぎもせず峯の右手を掴む。


「なんだそれ……ただ縛られてるだけじゃねーか」

「…!!」


  『ごめんなさい』

「茉梨亜もきっとそうだ、だから助ける。俺達が縛りから解けた様に」
「はぁ!?意味解んない!」

  『私ばかりでごめんなさい』


「茉梨亜は俺らにとって、凄く大切な奴なんだ」

「あの娘、黒川様ととても気持ち良さそうだったわよ!!」

  『峯と私、逆になれたら良かったのにね』


「それでも変わらない……茉梨亜は茉梨亜だから!!」

  『そしたら峯は抱かれて……両思いって感じになるのに』




  『両思い?ヤダ、黒川様は恋愛とかしないわよ』


  『でも、ほんと逆になれたら良かったのに、ごめんなさい……私が、居るから』


  『黒川様はアンタを御所望なの、アンタが居るからアタシの好きな黒川様はご機嫌なの。だからいいのよ』



――それでいい。





『ほんとに?』









「色んな人に思われて、茉梨亜は幸せ者ね」


――アタシは、誰にも思われなかった。


結局、黒川様にも。


気まぐれに連れて来られて、気まぐれに遊ばれて、ただ此処で黒川様を守るって言ってるだけ。



「アタシは茉梨亜が嫌いよ、黒川様を取ったんだもの」