「いい加減どけよ!」
「それはアタシの台詞だわ!諦めてアタシと付き合ってみたらどーぉ?」

拜早は先程から急所を狙って手刀を掲げてみるものの、相手もそれを分かっているので事如く受け流される。

こんな攻防では拉致が空かない。

なら、と峯の顔を向かって拳をくり出すが、拜早のそれは正面から峯に掴まれる。

「ダァメ、顔はエチケット違反よ」

「ちッ!」

拜早は峯の手の平から、掴まれた拳を素早く捻り引き抜いた。

「そぉんなに必死になっちゃって、アンタ達どこまで茉梨亜が好きなのよ」

「なら…あんたはなんで黒川が好きなんだ?」


一度距離を置く二人。

「あんな自分の欲しか考えてない奴、なんで守る?」
拜早の言葉に峯は眉を顰めた。

「黒川様が望む事をお助けするのがアタシ達よ。黒川様が良いというならそれで良いの」

「……」

「アタシを拾ってくれたのよ黒川様は。だから黒川様に着いていく。黒川様が危機に晒されたら守る。ステキじゃない」

言って、微笑んだ。


「…俺らも同じだよ」

「…あーら、茉梨亜のナイトにでもなったつもり?でも守れなかったじゃなぁい!」

アハハハと笑う峯はどこか狂喜的だったが、拜早は怯まなかった。

「……そうだ、守れなかった」

「…」
峯が止まる。

「あんた、ここの状況分かってたんじゃないのか?」

「はぁ?」

「じゃなきゃ“茉梨亜を守れなかった”なんて言わないもんな、黒川がやってる事がどんだけ酷な事か分かってたんじゃないか?」

「――!」

一瞬峯の表情に動揺が伺えたが、すぐに目付き鋭く微笑む。

「黒川様が第一よ。他の事なんて知らないわ!!」

再び峯は床を蹴って今度は拜早の首を狙う。
拜早は空かさずガードし、掴んだのは峯の手首。

「あんた、ちゃんと黒川を見ろよ!!」

「!」

峯の手首を捻りつつ、腹に一撃入れた。
やはり筋肉の硬さが響くが……

「……っ」
峯の動きが鈍くなった。


「見てるわよ…」
口を開く。

「でも!どんな事をしたって黒川様は絶対なの!!アタシの全てなのよ!!!」