親指で金属の安全装置が外された。
「!?」
高城もそれに反応したが既に遅い。咲眞が間髪入れずに投げた金属は、床に落ちる前に白い世界を発動させた。

「ァ…ァア!?」
突然の白光、文字通り目が眩んだ高城は両手で瞼を押さえ付ける。
「ミっ…見えナイよオォ!!」
閃光弾。
裸眼で目の当たりにしてしまえば暫く瞳孔が絞まり、まともに目が効けないだろう。

そして短い閃光が終わる。
「クックソゥ!!どこダぁァ!!!」
流石高城、こうなっても開かない目を無視し、がむしゃらに腕を振るってきた。
「(っ、ここで近付かないと…!)」
高城の拳は空を切る。すぐ側に接近した咲眞の身体があったが間一髪。
「はぁっ!!」
咲眞は力の限り高城の横太腿へと蹴りを入れた。

「………!!!!!」

高城絶句。


「ァアアァア!!!!」
絶叫。

攻撃した咲眞が驚く程。

……横太腿は筋肉の境目、そこに衝撃を与えれば確実に肉離れを起こす。
例え脂肪で筋肉が覆われていたとしても、柔らかい脂肪では神経諸とも守れはしない。

……体術を知らない咲眞がそこへ蹴りを入れたのは偶然であったが。
しかしこの機会を逃す手はない。
咲眞はサングラスを外し床に転がっていたスタンガンを素早く掴んだ。

咲眞の持つスタンガンは20万ボルト。
打ち込めばいくら身体に自信がある者でも意識を失う。
それは高城も例外ではない…!

『バシュッ』


「………っ」


高城は白目を向いて昏倒した。



重量を感じさせる音が床に響く。




「はぁ…っ」

一度息を吐き、咲眞はスタンガンの電源を落として冷や汗を拭った。


「なんとかなった、ね……」


しかし、こんな奴が何故黒川の下になどついているのか。

咲眞は高城の巨体を見下ろし、無意識に眉を下げた。