峯の首筋を狙ったが、当然腕でガードされる。

「狙いは急所かしら?でもそう簡単に取らせないわよ」

人間の致命的箇所は首、眉間、鳩尾、そして……

「遠慮、しなくていいよな?」
「…あくまで女性として扱って欲しいわね」



「じゃァ、ぼくはキミの相手?」

嬉々とした表情の高城をゆっくり視野に入れて、咲眞はスタンガンを持つ。
「(…あの贅肉じゃあまり効かなそうだけど……)」

いや、所詮人間は大半が水分。20万ボルトを押し付けられて感電しない奴などいない。
前回囚われた時と違って武器は手元にある…
相手の懐に入れば勝ちだ。

(…たぶん)

拜早と違って体術的な動きは咲眞はよく分からない。


「キミ、女の子みたいナ顔してルネ!ぼくはやっぱリ女の子がイいなァ」
「…僕は男の子だけどね」
咲眞の笑みが恐かった。

「いクヨ!!」
高城の振りかぶった張手。
こいつの素早さは舐められない。
辛うじてしゃがんで避けるが、高城は勢いに乗り覆い被さって来る。
「ぅわっ」
慌てて高城の股をくぐり高城の背後へ出た。

「あー恐、僕やっぱり苦手だなぁこういうの…」
素早く身を翻して襲い掛かってくる高城に、とりあえず咲眞は逃げの一手。

「っ!逃がさないヨぉ!」
重たい足音を起てながら追い迫ってくる相手……
あまり行き過ぎると拜早と離れてしまう。

だがこれくらい離れれば出来る事も…
「何する気かナァ!!」
今度は拳が飛んで来た。
「くッ!」
避け切れない、そう践んだ咲眞は、咄嗟の判断で電源を入れたスタンガンを勢いよく突き出す。

ショート音が鳴り小さな閃光。
高城の拳にぶち当たったスタンガンだったが、ショートの反動でそれは咲眞の手を離れ後方へ弾かれた。

「ハァァ…びっくりしタぁ!」

高城の太い拳は黒ずんで薄い煙が出ている……
しかし倒れない。直接電流を打ち込めなかったか。

カラカラとスタンガンが床で回り、止まる。

ショートで多少怯んでいる高城、この一瞬の隙……
咲眞は素早く胸ポケットからサングラスを取り出し装着しつつ、もう片手に持ったのは小さな金属の固まり。