「ミっ峯!行っちゃうヨ!」
「……ちょっと待って高城」


黒服達は案の定二人を追い掛けて来る。
咲眞は何をする気なのか。

何とか角まで辿り着き素早く曲がる。
と、咲眞は曲がった壁に身を張り付けポケットから金属の物体を取り出した。
「おい咲眞、それ…」
黒服達に追い付かれる前に、咲眞は金属から小さな止め具を引き抜く。
「拜早、耳塞いで!!」
「あ?!」
そして黒服らが追ってくる角の向こうへ、その金属を投げ付けた。

カン という乾いた音がして――


爆発音。





「――ッ!!」

――もくもくとした白い煙が流れてくる……

「煙、当たらないように……行くよ拜早」
「さ、咲眞…何投げたんだ」
先へ進もうとする咲眞の背に続きながら拜早は尋ねる。
言われるまま咄嗟に耳を塞いだとはいえ、若干耳鳴りがしていた。

「まさか爆弾じゃないよな、閃光弾か?」
「うぅん催涙弾。黒服はサングラス掛けてるから閃光効かないだろうし」
廊下を走りながら咲眞は悠々と言ってのける。
催涙弾…どうせ手作りなのだろうなと拜早は目を細めた。
「後爆発音だけやたら出る様にしといたから、皆暫く耳使えないはずだよ」
「まじかよ」
と、いう事は奴らは目から涙が止まらない上に耳がキンキンしていると。

ちょっと哀れだ。


「!」
そう拜早が思っていた時、廊下に気配を感じる。咲眞を制止させた。

瞬間それは右にあった曲がり角から飛び出て来る。
「高城…!!」
黒川邸、この階どれだけ廊下が入り組んでるんだと舌打ちして、拜早は咲眞を下がらせた。
回り込みされた。高城に続き峯も現れる。

「…やっぱ感付いたんだ」
咲眞が苦笑する。
少し笑みを含みながら峯は口を開いた。
「アンタ頭良さそうだもの、ただ無謀には逃げないと思っただけよ」

あの催涙弾を避け、回り道をし立ちはだかる峯と高城。

「見逃して…くれるわけねーよな」

「勿論。おねーさんが可愛がってアゲル」

ケタケタと高城が笑った。