「あ……」
拜早の横に辿り着いた人影は。

「めっちゃやられそうな状況だねー大丈夫?」
現れたのは一度別れたはずの咲眞。何故か上から下まで元通り彼の姿に戻っている。

「おま、その格好いいのかよ…」
「あぁ、黒服に舐められるのやだったから取っちゃった」
咲眞はスタイルが潰れていた独特の金メッシュ入りの髪を掻き上げる。

「ねぇ、黒服に蓋尻の所まで案内させたはずなんだけど…なんで峯と高城がいるの」
「色々あってな…それより茉梨亜の居場所が分かった」

「ぁらぁら、アンタも居たのぉ」
悲惨な状況の黒服らを差し置き、峯が楽しそうに咲眞を見やる。

「二人で茉梨亜を取り戻しに来たのね…ゴクローサマ」
「マリアは黒川サマのモノだョー」
立ちはだかる峯と高城。

廊下の隅で咲眞が案内させた二人の黒服が、スタンガンによって倒れている。

「…茉梨亜何処なの?」
小声で咲眞が尋ねた。
「息子のとこ。さっき高城が送ったらしいから、今なら絶対居る」

言って、拜早は目の前の二人を睨む。
こうしている時間が惜しいのに……

「ちょっとアンタ達いつまで騒いでるの!!」
峯が後ろの黒服達に怒鳴った。
「黒い服の上からそんな赤い血が見える分けないでしょ?!ペイント弾よ!!」

『え…?』

きょとんとする黒服達。拜早が隣りを見やると相変わらず飄々とした顔の咲眞。
そういえば手に黒い銃を持っている。
「何だそれ」
「改造ペイント銃。痺れ玉の中にインクが入ってるから、当たるとかなり痛い」
…だから黒服らは妙に騒いでたのか。

「拜早、逃げるよ」
咲眞が耳元で囁いた。が、拜早は怪訝そうに口を開く。
「でもすぐ追い付かれるぞ?」
「大丈夫」

妙に自身あり気に笑みを作った相方に、拜早は疑問符を浮かべた。

そうこうしている内に液体がペイントだと分かった黒服達は、威勢を取り戻して飛び掛かってくる。
「てめぇ!!騙しやがったな!!」
「勝手に勘違いしたくせに」
咲眞は小さく嘲笑し、黒服や峯の向きよりUターン。
拜早も引っ張られながら後に続く。
「おっおい…!」
「あの角右ね」

咲眞はそれだけ言い、二人は兎に角精鋭軍団から逃げる。