「あっ拜早だ……」
「ォイ、もういいだろっ」
「この辺りに蓋尻が居るの?」
「ああ!今の時間はここを巡回してるはずだ!」
「分かった……どうもありがと」
黒服が怯んだ隙をカバーして、今度は峯が目前に現れる。
「相変わらずイイ動きしてんじゃない、でもまだまだね!」
峯にいきなり額を掴まれ、拜早は勢い良く後ろへ持って行かれる。
「(まずい!!)」
倒された時、後頭部を床へ打ち付けない様に顎を引いておくのは基本だが、額を掴まれていてはそれが出来ない。
倒される一瞬に拜早はそれ理解したが、しかしどうする事もままならず足元が浮き背中から床に叩き付けられる。
鈍い音が鳴った。
「……ッッ!!!」
……大丈夫だ。身体は痛過ぎるが、頭はなんとか浮かせられた。
と、素早く峯が拜早の上から身を引く。
「?!」
そして間髪入れず上から高城が飛び降りて来る姿――
「なに…!!」
寸での差、拜早は横へ転がって避けた。
「ア!!」
高城はそのままドスンと尻から床に落ちる。
「……超痛ってぇ」
廊下の端に身を寄せ、壁を借りて拜早は立ち上がった。峯のお陰で全身がまだビリビリしているが、高城は尻の肉が衝撃を和らげたのか、廊下に尻餅を突いてもケロッとした顔。
「ヤバイ…この調子じゃぜってーやられる……!!」
峯を見、高城を見、精鋭達に目を移す。
ジリ、と拜早へ迫る精鋭達。
やり過ごすのは無理な話か…だが勝てる気もしない……
精鋭が動いた。
仕方なく再びジャックナイフを構える。無理矢理にでも倒していくしかない!
そう覚悟を決めた時。
『パンッ』
何処からか破裂音が聞こえた。
…拜早の逆方向、峯らがいる辺り。
「何、今の」
峯が目を丸くする。と同時に再び、
『パパパパンッ』
今度は立て続けに鳴る。
「ぅわぁぁ?!なんじゃこりゃぁあ!!」
精鋭が叫び出した。
彼らの胸は赤く染まっている……
「?!」
峯は眉を顰め高城は目を見開いた。
「ちっ血だぁぁ!!」
黒いスーツにべっとりと付く赤色を見て喚き出す黒服。
それらの間を縫って見慣れた人影がこちらに来るのが見えた。



