咲眞は既に上着をずらされ勝手にベルトまで取り外しに掛かられていたが、咲眞の一言で作業に勤む男達の動きが止まった。

「へぇ?何言ってんの?」

当主の黒川は少年に対してバイセクシャルだが、黒服はやはり女体が目当てだろう。

男達は咲眞が何を言っているのか意味が分からず首を傾げている。

「だからぁ、男とやれるのかって聞いてるんですぅ〜」

「なーに言っちゃってるの、キミみたいな可愛いコとやるのが一番なんだって…ちょっとじっとしてな、気持ちいい事してやるから」

男がそう言った瞬間、咲眞は男達の手を振り払い上着を羽織り直しながら、内ポケットに手をやった。

「残念、お兄さん達とじゃ気持ちよくなれないよ」

片手で腰のベルトを直しつつ、咲眞は隠し持っていた物を男達へ素早く向ける。
「?!!」

それを見て黒服は否応なしに動けなくなった。

「僕は女の子が好きだから」


黒服達に向けられたのは銀色の拳銃。
小型だが人の動きを止めるには充分だ。

「おまえ…?!」
黒服達は焦ったがもう遅い。

「部屋から出ろ、今すぐに」
銃口は一つ。
もう一人の為に咲眞は慣れた様にスタンガンを取り出す。
「!」
「出たら蓋尻の所に案内しろ、知らなければ探せ」

「……!!」
「くっこんな事したって……」

黒服は咲眞を睨んだが、効力はない。
咲眞は口の端を上げて補足した。

「監視カメラは切ってある、誰も来ないよ」
「なっなんだと?」
「さ、早く」












「なんだ今の音は!!」

廊下から男の声。
この声は……

「――蓋尻」

拜早は目を細めて出入口を見やった。
瞬間、開いたままだった扉から一人の小男が飛び込んでくる。

ガラスの音を聞き付けたにしては来るのがやけに早い。調度近くを巡回でもしていたのだろうか。

忘れもしない、自分達を引き裂いた、元凶――


「!? 誰ですかアナタは!!」

蓋尻……
黒いスーツを着、撫で付けた艶のある黒髪の小男。

目の前に立つ不審な白髪の少年に対し、蓋尻も思わず目を見開いた。