部屋の中、目に入ったのは……


まず積み上げられた段ボール。
古い部屋をあえて倉庫にした感じだ。

そして段ボールに紛れ一組の男女の姿が目に留まる。

「な…ななッななんだおまえはッ!!」

拜早の姿を捕らえた男は馬乗りになっていた女から離れ、思いきり動揺しだした。

拜早も大方部屋の中を予測していたが、実際の男の様子に何も言えず口が半開きになる。

「(く、黒服だよな…)」

男は一応服を着ていたが、下の方で大変なものだけが堂々と小躍りしている。
隠せよ、と拜早は心の中で突っ込んで、相手の女を一瞥した。
長い黒髪…茉梨亜ではない。

「ぇ……なに…?」

消え入りそうに呟いた女は状況を解らないでいる。
女は段ボールの上に裸で座らされており、目には布で目隠し。更に両手が頭の上で縛られていた。
顔や体に浴びせられたぬめりで長い髪が肌に張り付いている。
一体何をやっていたのか……

「――!」


ふいに拜早の頭の中をフラッシュバックが駆け抜ける。
思わず口元を押さえ、積み上げられた段ボールに片手を着いた。

「ひッ!!」
男は拜早の不審な行動に肩を上げ、そこで出しっぱなしにされた自分の大事なものの存在を思い出す。
慌ててズボンの中へそれを仕舞おうとするが、なかなかどうして上手くいかない。
「くそっこの…こっ…」
男が青い顔をしながらもう一度現れた少年を見ると、少年は口を押さえたまま鋭い目付きで自分を睨んだ。

「…!!なっなんだおまえ誰だ!!何でここに…」
虚勢を張って男は訪問者を指差す。
上擦った声で叫んだものの、顔を上げた少年は一切動じていなかった。
そのまま足元の段ボールを蹴飛ばし男に歩み寄る。

「まっまさかおまえッ侵…」
それ以上言う前に遮られ、
「うるせぇよ」
男は急所を勢いよく蹴り上げられた。
「ンギャ!!!」

悲惨な声を出して男は悶絶する。
別に狙って蹴った訳ではなかったのだが、足を上げた先がたまたまそこだったという……たまたまだけに。

「ぅわ、くだらね…」
そう呟いて拜早は腰に巻いていた自分の薄手の上着をほどく。

動けない女に近付いてその服を裸体へ投げ掛け、持っていたナイフで縛られていた両手首の紐を切った。