「今日も収穫ゼロだったな…帰って寝るか」

「ぉい待て、あの女見ろよ!」

「おぉ!童顔っぽいが上玉じゃねえか?」



廃屋の屋根の上に、だらしのない男が数人……

ふと下を見ると、向こうから黄土色の髪をしたツインテールの人物が走ってくる。



「ククク、日の出と共に俺らもイィモン拝めそーじゃんっ」

男達は慣れたようにその廃屋から飛び降りた。

「きゃっ何!?」


自宅を目指していた茉梨亜の前に、突然男達が降ってくる。
巨漢だったり痩せていたりまだらな男達は、四人組。

「あ…あーらこんな朝早くに男だけでつるんで何してるのかしら?」

茉梨亜はやばそうな感じを受けながらも、半笑いで男達に言葉を掛けた。

「ぅうわ声もちょっとハスキーでカワイィ〜〜〜」
「キミ〜お兄サン達とイィ事しなィ?」

男達は上から下まで茉梨亜を見ると、下卑た笑みを浮かべてにじり寄る。

「お生憎様…!あんた達とイィ事なんて死んでもごめんだわっ!」
冷や汗を覚えつつ、茉梨亜は笑顔で吐き捨てながら進行方向に全速力で走り出した。

「まったくなんなの昨日といい今日いい連続厄日!?」

あからさまに変な奴に出会ったら舐めてはいけない、スラムの常識である。


……だが相手は大の大人四人。


どこから回り込んだのか、茉梨亜の前後を挟み打ちにされてしまった。


「逃がさねェよぉ」
「ぁれぁれ、恐いのかーい?」

「(もぅっこいつらもムカつく……なんでこういう奴らって無駄に自信満々なの!?)」

まだ白の怪物の方が、少年といえど十二分に怖かった。


「もしかして四人は初めてかな?」
「だいじょーぶだってぇ俺らやらしい…じゃないヤサシイよ?」
「おまえ何言ってんだよー」

男達は互いに冗談めかしたものを言い合い、嫌な笑いを抑えようともしない。

「…っ!」

そして茉梨亜は逃げ道を塞がれ完全に囲まれてしまった。