黒川が囁いた言葉を、美織は理解出来なかった。

「どぅいうイミですかぁ?」

尋ねたのはあずさ。

「ん?まずは服を脱いで貰わねば分からないだろう?」

なんとでもないという風に黒川は微笑んで言ってのける。

「そして私に教えておくれ。例えばここが胸だ、ここが腿だ…とね」

「……!!」

とんでも、ない。
何故そんな。

美織は目を見開いた。
「で、でも…」

「一人ずつでもいいし、二人一緒に紹介してくれても構わないよ。あぁ、お互いに触れ合ってみるのも良いな」

まるで芝居の演出でも伝える様に説明する黒川は、まだ二人の肩に手を置いたまま。

「……それとも私が手伝った方が脱ぎやすいかな?」
「ッ!!」
美織は黒川の手を払って後ろへ身じろいだ。

「ははは、心配ない……初対面の男の私では何かと緊張するだろう?よし、私は君達には触れないでおこう」

言って、黒川は残ったあずさの肩へ置いていた手もすっと引く。

「女の子同士の方が何かと紹介もし易いだろう…さ、床は冷たい、なんならベッドも使ってくれたまえ」

黒川は身を避け、背後に大々的に設置してあった天蓋付きベッドを見せた。

ここで…自分の体を紹介しろと?

なんて事……!!


「おや、美織と言ったかな?顔色が悪い様だが、そんなに緊張しなくとも大丈夫だからね」

微笑む黒川…その表情はとても優しい。
この男はこの言葉遣いと笑顔で総てを手に入れてきた……
自分の欲望を満たしてきたのだ。


「ぁ〜美織ちゃん、疲れちゃったんじゃなぃ〜〜?あたしが探検連れ回しちゃったし!黒川さまの屋敷って事でキヅカレとかぁ〜〜」

美織の顔をくるくるとした黒い瞳で覗き込み、あずさはそう言って黒川を見上げる。

あずさのボブカットヘアが揺れた。

「黒川さまぁ、あたしもちょびっと休憩したぃですぅ〜その間イロイロしたくもしたいしぃ」