二人が去った廊下。

扉が開く。


部屋の中から現れたのは一人の少女。

柔らかいウェーブの掛かった薄黄土色の長い髪。
黒い瞳。
白のキャミソールワンピースを着ていた。

「……」


「どうした?」

部屋の中から声。


「…高城が出掛けたみたい」

少女は伏せ目がちに声の主に返した。

「そうかそうか…」

少女の背後から、ぬっと黒い影が現れる。


「どうだ?もう一度…今度は思い切り声を出して構わないよ…」

影は少女を撫でる様に抱きしめた。

少女は変わらず疎い瞳で、ただ横目に影を見る。


「…分かりました」

影に同意した声は気丈にも芯がある様に思わせた。


――“二人”はまた扉の向こうへ消える。



廊下には誰も居ない。