にせ偽善者

奴を彼女と再会させたときには、表向きは、役者を辞め、起業した矢先ということになっている。むろん、それは、私の立ち上げた会社の雇われなのだが、彼女は、少し前に、懲りているはずの奴のことを受け入れた。
全てを仕組んでいた私には笑止であったが、それは、計画の範疇であったので、別にショックはない。当初、私が立て替えた愛人契約にも拘らず、奴との暮らしを優先し始めた。
たぶん、彼女は奴のことを本気で愛していたのであろう。奴の言う事を良くきいた。
奴に任せた仕事は、ネットによる介護サービス事業だ。
看護資格を持っていた彼女が自然、実務を担当するようになっていった。
彼女は実に献身的で、利用者からの評判も頗る好調であった。