にせ偽善者

自分にはない能力で、彼女と奴は、思い通りに事業を成功させていった。
たぶん、私一人では、思うだけで、絵に描いた餅に過ぎなかった構想が思う以上に成果をあげていった。

むろん、彼女と奴の仲は、順風満帆というわけではない。もともとの浪費癖の奴に、疲弊する日々であった彼女は、私と愛人として、会ってる時に、癒しを求めるようになった。  奴を雁字搦めに、牛耳ることは簡単であった。しかし、私は、奴を野放しにした。いつしか奴は、私のやり方で、介護従業員を募るだけが任務となり、それ以外の業務は 彼女に押し付けるようになっていった。  逆に彼女に実務を任せることにより、業務が順調に運ぶようになっていったのは私の計算外であったが、もっと計算外だったことは、私と彼女の愛人契約の立場が逆転したことであった。