「!?」


雫が落ちた場所から、波紋のように草木がざわめく。

そしてお屋敷の周りがパァーっと明るくなった。

青白く、美しい輝きで……。




「涙花……咲いた?」




諦めかけていたのに……。

涙花はフィルから零れ落ちる雫を吸い上げ、見事な花を咲かせたのだ。

そんな涙花に呆気にとられていると、今度は手元が光りだした。

見ると、ティアから涙花と同じ青白い輝きが溢れ出している。

すると、ティアの枯れてしまったようにカサカサだった肌が段々と潤いを取り戻していく。

そして……




「咲かせてくれたんだね、フィル……。」




「ティア……っ!!」


もう2度と開かないと思っていた瞼が開いて。

フィルはギュッとティアを抱きしめた。


「ティア……」




「ずっと傍にいてくれたんだね……。」




フィルの言葉に、ティアは優しく微笑んだ。

ティアが光に満ち溢れたとき、フィルには全部わかった。

ティアは“ティア”として出会う前から……




ずっとずっと、フィルの傍にいてくれたこと……。




「僕は1人ぼっちじゃなかったんだ……。」


その事実を知ってもフィルの目からは次から次へと雫が零れた。

けれど、それは悲しみで彩られたものではなく……




喜びで満ち溢れた、“幸せの涙”。




「ねぇ、ティア……」

「ん?」

「これからも……僕の傍で咲いていてくれる?」




「……もちろん!」