「ティア?」


フィルはフラフラとティアに近付き、そっと抱き起こす。

触れてみると、ティアの柔らかだった肌がカサカサと乾燥しているのがわかった。

それは、水を与えられずに枯れてしまった花のように……。


「ティア、起きて?」


フィルは感じていた。

ティアは、もう……

でも、信じられなくて……




信じたくなくて……。




「こんな所で寝たら風邪引くから、ね?」


もう目を覚ますことのないであろうティアに、一生懸命に語りかける。


「涙花見るんだろ?僕まだ泣いてないよ?」


ユサユサとティアの体を揺すって。


「ねぇ、ティア……起きてよティア!!」


行き場のない感情をどうすることも出来ず、ただただティアを強く揺さぶる。


「1人にしないって言ったじゃないか……幸せな、涙をって……」


フィルの視界がぼやける。

そして……


「ねぇ、ティア……僕は今……」




「とっても……悲しいんだ。」




何も見えなくなって、フィルは笑った。

悲しい微笑みのはずなのに、それはとてもとても美しくて……。

そんな笑顔を、雫が彩る。

雫はスッと頬を伝い、そしてポタリと地面を濡らした。




その時だ