涙花‐tear flower‐【短編】

「フィル……。」


震えるフィルをそっと包み込む。

小さな体で、精一杯。


「ゴメンね、怖い思いさせて……もう1人にしないから。」


そう言うと、ティアはフィルの小指と自らの小指を絡めた。

そして……




「約束……ね?」




ティアの言葉に、フィルはコクンと頷いた。

そんなフィルに安堵したティアだったが、ハッとしてフィルに問い掛ける。


「フィル、涙出た!?」

「え……?」


突然のことに呆然とするフィル。

ティアはフィルの顔を覗き込んで確認してみたが……


「うーん、出てないか……。」


涙が出ていないとわかると、ティアは複雑そうな顔をした。

すると……


「涙が出るのって……」

「ん?」




「こんなに苦しい気持ちなの?」




フィルの疑問に少しの戸惑いを見せるティア。

それから少しの間を置いてティアが口を開いた。


「フィルにはね、悲しいの方がわかりやすいって思ったの。」


ティアの言うとおり、確かにフィルは先程のことで悲しみを感じつつあった。


ティアがいなくなってしまう。


そう思ったとき、フィルはとても怯えた……




慣れ親しんだはずの、“1人ぼっち”に……。