涙花‐tear flower‐【短編】

「いたたたた……」


フィルの上でむくりと起き上がるティア。


「ゴメンね、フィル。大丈夫?」


フィルもゆっくりと起き上がる。

だが、ティアの問い掛けには答えずに押し黙っていた。


「フィル……?」


恐る恐る声をかける。

すると……




「なんで……」




「え?」

「なんでこんな危ないことしたんだ!?」


いきなりの怒鳴り声に、ティアの体が強張る。

フィルはといえば、儚げな容姿からは想像もできないぐらいに鋭い眼差しでティアを見つめていた。


「フィル……怒ってるの?」

「怒る……?」

「だって怖いよ……。」


そう言って怯える表情に、フィルは戸惑った。


「それ、は……ティアが危険なことするから……」


言いようのない感情に、言葉が詰まる。


(何だろう……この気持ち。)


苦しくて、息が上手くできない。

怯えているのか?

でも何に……?

すると……


「フィル、ゴメンね……」




「ありがとう。」




その言葉に、フィルは疑問符を浮かべた。

不思議に思っていると、ティアがそっとフィルの手を握りしめる。


「フィルはティアのこと心配してくれたから、怒ってくれたんだよね?」

「……よく、わからない。けど……」


グッと胸をおさえる。

あの時、心臓が潰れてしまいそうで……




「怖かった……っ。」