涙花‐tear flower‐【短編】

そんなある日のことだった。


朝、フィルが目覚めると、隣で眠っているはずのティアの姿が見当たらない。


「ティア……?」


呼んでみても、返事はない。

先に下におりているのかと思い、フィルは食堂へ向かった。


「ティア……いないの?」


けれど、食堂にもティアの姿はない。


(庭で花でも見てるのかな……?)


フィルは、朝食の準備がてら庭へと足を運んだ。


(いない……。)


お屋敷から出て庭を見渡してみても、ティアの姿は見えなかった。

嫌な予感がする……。

と、その時だ。


「フィル〜!」


声が上からふってきた。

フィルはまさかと思い、声のする方を見上げた。