涙花‐tear flower‐【短編】

朝は“おはよう”から始まる。

2人で野菜や果物をとったら朝食。

食べ終わったら庭の手入れ。

その後はお屋敷の中で本を読んで過ごす。

夜は朝にとっておいた野菜を温かい料理にして食べる。

体がポカポカして、眠くなったら“おやすみなさい”。


流れだけで考えれば、フィルが1人でいたときと何ら変わりなかった。

ただ1人で、ずっと同じ日々の繰り返し……。


けれど、違った。

フィルはティアと過ごすことで、たくさんのことを知った。


おはようやおやすみを言うことが、なんだか温かくてくすぐったい。

野菜や果物は、こんなに美味しいものだっただろうか?

穴があくほど読んだ本なのに、2人で読むと……


あぁ、そうか……




この気持ちが、“楽しい”なんだ。




フィルは今、確かにそれを感じていた。