涙花‐tear flower‐【短編】

「1人じゃ……ない?」

「うん、私がいるから!」


とても、眩しい笑顔だった。


「2人でいたら、楽しいがわかるよ!そしたら1人が寂しいの意味も、きっとわかる。」

「そう……かな?」


フィルは、そんな感情になれるのか疑問だった。

けれど……


「そうだよ」




「だってフィル、笑ってるもん!」




ティアのその言葉に、フィルはハッとした。

そう、フィルは笑っていたのだ。

疑問に感じることもなく、ただただ自然に。


「笑うってことは、楽しいってことだよ!」


笑顔で言うティア。

フィルは、顔が緩むのを確かに感じた。

ティアの笑顔を見ていると、自然とそうなるのだ。

この気持ちは……




“楽しい”……?




「2人で楽しいをたくさん知ろう?」

「……うん。」


フィルは頷くと、握られた手をそっと握り返した。

こうして、日常のような非日常の幕が開いたのだった……。