父と話していたせいで、待ち合わせに遅れそうになった私は、急いで電車に飛び乗った。


向かいには年老いた老夫婦が座っていた。

車内は空調が効いているのに、おじいさんの方は首に汗をかいていた。

それに気付いたおばあさんが、鞄から木綿のハンカチを取り出した。

「そんなんせんでいい」

おじいさんはふてくされていたが、おばあさんは気にせず汗を拭っていた。

この2人も昔はどっちかが告白して、付き合ったりしたのかな。

おばあさんの押しに負けて結婚したのかも…

なんて勝手に想像を膨らませたりしながら、私は電車に揺られていた。



着いたのは都内でも有名な大きなプール。

それでも暑い今日のような日は、満員で入場制限がかけられていた。