mixed Emotion

見透かしたような顔で理香ちゃんは私を見る。

頭の中の想像まで読まれていそうで

恥ずかしくなる。

私は緩んだ顔を引き締めて、理香ちゃんを見た。

「うん、気になる。」


理香ちゃんにはどうせ何でもお見通しなのだと思うと、

素直になれた。

だけど、口に出すと、悲しくなった。


気になったって、どうせ彼女がいる。


鞄から振動を感じて携帯を取りだすと、

メールが届いていた。


〔ごめん!今日行けそうにない。
彼氏にばれちゃった(泣)耕太の番号載せとくから、連れていってもらって!〕

美玖からだった。

着信も2件入っていたのに、気が付かなかった。


「・・・うん、うん、また終わったら聞くから、今は彼氏へのフォローを優先しなよ。」

隣で理香ちゃんは、間違いなく美玖であろう相手と電話をしていた。

あの要領のいい美玖が
取り乱している姿は、
あまり想像できないけど、絵文字の少ない文面から、
彼氏の目を盗んで打ったと、容易に推測された。

理香ちゃんが携帯をポケットにしまうのを見て


「大丈夫かな?美玖・・・」


不安気な声を出した私に、

理香ちゃんも難色を示した。


「仕方ないわね。
美玖が来れないのは残念だけど、もっと残念なのは耕太君だろうし?」

彼はあきらかに美玖に好意を抱いていた。

あの合コン以来、スピッツは

猛烈にアタックしており、
美玖に彼氏がいると知ってもなお、

「俺の方が絶対いいって」

と怯むことなく吠え続けていた。


私より少しだけ背の高いスピッツと、
マスコットみたいな美玖はこじんまりしたカップルでお似合いな気もするけど、
「クッキーを焼いていそうなタイプ」ではないけどなぁ

というのが

私の率直な感想だった。

「こんちは〜」

気の抜けた声がして振り向くと、

噂をすれば・・・ってやつで