心の国のアリス

体のざわめきが収まり、ふと目を開けてみると、なんと先ほどよりも余計にドアが小さくなっている。もはや小指くらいしか通せない。
いや、ドアが縮んだわけではないようだ。先ほどからいる部屋はやけに狭く感じ、天井にも容易に手が届く。
そう、私が大きくなってしまったのだ。
こんなことがあっていいのだろうか。

「何これ!意味わかんない!」

あまりの出来事に思わず叫んでしまう。でも、カラダが大きくなったぶん、声も大きくなっていたようだ。

「あんまり大声出さないでくれよ。飲む方を間違えたんだ。そっちじゃない方…」

「どっちが当たりとかじゃない!なんで私大きくなってんの?!何このクスリ!何これ!」

おとなしく話を聞くなんて出来なかった。あり得ない出来事に混乱する。

「戻して!私を今すぐ戻して!」

泣きながらそう言うと、私をなだめるようにその声の主が言った。

「もう一個のほうを飲めば、今度は小さくなることが出来るから、そんなに泣かないでくれ。」

もう一個。テーブルに目を向け、マシじゃない色の方を手に取り、慌ててそれを飲み干した。

「あっ。」

そう声の主が漏らしたと思ったら、背はみるみるうちに縮んでいき、もとの大きさへと近付いていった。
しかし、もとの大きさに戻っても縮まることは止まらず、今度はぐんぐんと小さくなってしまった。