心の国のアリス

もし彼らのような兵士に見つかったとしても、命を狙われるようなことはなさそうだ。
しかし、どちらにせよ、ここはさっさと、ちさやうみと合流するべきだろう。

とりあえず人のいない隙に、この茂みから外へ出ようと機会をうかがっていると、後ろからぽん、と肩を叩かれた。

「ひっ!」と叫び出そうな声を押し殺し、後ろを振り向くと、そこにはうみの家であった陰山ひろが立っていた。

「アリス、こんなとこで何してんだ?城に入れば?」

まったく状況がわかっていないようだ。のんきにそんなことを言うヒロに、今の状況を伝えた。

「そうなのか…。そりゃ大変だなぁ。」

と、他人事だからか、ヒロは軽い口調で言った。

「ま、そういうことならこっちに来な。城の修理とかで呼ばれることが多いから、わりとこの城には詳しいんだ。」

そう言うと、裏道のような通路に入り、手招きをした。
まさに助け舟。私はこそこそとヒロの後に付いて行った。

さすが詳しいと言うだけのことはある。兵士たちとまったくすれ違わずに、サクサクと進んで行ける。

でも、一体どこに向かっているのだろうか。ちさかうみの居場所を知ってるのかなと考えながら歩いていると、ふとヒロの歩みが止まった。