こいつはいきなりやってきてなぜ不利になるようなことばかり言うのか。
私が情緒不安定なら、ここの人達に情緒など存在しないだろう。

「ふむ。では、この女人が犯人であっても何ら疑問はないと?」

「いえ、彼女は先ほど城に来たばかりです。犯人とするには状況的に無理かと…。」

先ほどは暴言、申し訳なかった。この方こそ救世主のようだ。

「そう…か。なら、下がって良い。」

ハヤトは帽子を取り深々と礼をした後、こちらに軽くウインクして去っていった。

「仕方がない。そなたは無罪ということか。」

仕方がないとはどういうことか。この女王、ただ自分の趣味で人を裁きたいようにしか見えない。

ともあれ、私への容疑は見事ハヤトの発言により回避されたのだった。
ほっと肩をなで下ろすと、けたたましい叫び声で衛兵が入ってきた。

「女王陛下!この娘の荷物からこれが出てまいりました!」

はっ!と気付くと、いつの間にか私のかばんは衛兵の手に渡っていた。
そして、その中にはもちろん畳んだタルトの入っていた空き箱。

「…!貴様、私を騙す気だったのだな!衛兵!!こやつの首をはねよ!」

甲高い声でそう叫ぶ女王。