「あ、いや、二人ともアリスを捜してるみたいだから、どっちかなって思って…。」

「じゃあ、両方だ!」

これはデジャブというやつだろうか。つい先ほども同じような不快な出来事があった気がする。

とりあえず、この調子だとこれ以上の情報は得られない気がする。
この塀の向こうがお城だということがわかっただけでも良かったということにしておこう。

「あの…それじゃ私…。」

「俺が思うにそのアリスってのは女王陛下のような強そうな人ではなかろうか。ご自分の味方につければ頼りになること間違いないからな。」

「はい…じゃあ、そろそろ…。」

「ふむ、お前さんもどことなく女王陛下に似ている気もするが、まったく強そうではないな。これではアリスという女子の足下にも及ばんぞ。」

話す隙がないので、適当にお辞儀をして、再び塀沿いをまた歩き始めた。後ろからはまだ話が終わっておらん、との怒りの声が続いていたが、やがて「どすん」という大きな音が響き、怒り声は聞こえなくなった。