『彼は…』


海辺の小屋でCとTは話をしていた。

「…これは何?」
TはCがいじっている金属製の物体を見て言った。

「これかい?理解しにくいだろうな。…簡単に言えば…ー」Cは説明し始めた。

「ふ~ん。」
説明を聞いたTはそう一言いっただけだった。
確かにTの知識では理解しづらい代物であったが、だからこそそれ以上は質問しなかった。

(まぁ、ここは俺のいた所とは違う世界だし。)

今度はCが質問してきた。
「さっきの続きだけど、君はどこから来たんだ?」
CはTの異様な服装と、出会った時の事を思い返していた。

「…暁の闇の向こうから」


Tの突拍子もない答えにCは一瞬、作業の手を止めた。
それが冗談だと瞬間思いつかなかったのは、Tの最初から放っている異様さのせいだろうか?
Cは笑った。

「ははっ、まるで詩人だな。それとも君の国の異名か何かかい?」
Tを振り返ると、彼は笑っていなかった。

「詩を作って誉められた事はあまりないよ。もっとも、披露する事もあまりなかったが。」

彼は一体何者なんだろうか。


終わり