僕の前を黒い男は歩き続ける。

あの声からすれば、おそらく男のはずだ。


常に一定の速さで、あれ以降一言も喋らない。


僕に背を向けているため、逃げることも後から締め上げることも出来るが、なんだかそれをさせない重い雰囲気を醸(かも)し出している。


それに僕も、この男から逃げても、この男を倒しても、全く意味がないことくらいわかっていたから。


そうして歩いていると、廊下の途中の扉が一つ、僕の隣辺りで開いた。