「ったくもー…アイツは…」
つくづくやっぱり
海の行動は意味が解らない。
なんて考えながらローファーに履き変えて、歩き出したとき
「河野さーんっ」
前から声がして顔を上げる
「……え。」
ウルフヘアーの彼が参上。
彼を見た瞬間のあたしの顔は、ものすごく引き攣ってただろうな。
「あのさっ」
人懐こい笑顔で話しかけてくる彼に
「…はい、」
何故かぎくしゃくするあたしの返事。
「俺も南美って、呼んでいい?…アイツみたいに。」
……アイツ?
海の、こと?
男子であたしを南美と呼ぶのは、海しか居ない。
「……なんで?」
今さっき聞いた小春からの話の直後、
あたしには何だかこの人がうさん臭く見える。
「…俺さ?河野さんの事がずっと好きだったんだよね。」
………はっ??
ニッコリ笑う彼に、あたしは思わず彼を凝視した。
…多分、ひどい顔で
「付き合ってくれないかな?」
「…な…」
「ふざけんなっ!!!」
「…っわっ?!」
耳に入って来たのは
聞き覚えのある声。
突然あたしとウルフヘアーの彼とを割るように、間に入ってきた……左手?
かと思ったら
見慣れた背中であたしの視界から
ウルフヘアーの彼が遮られた。

