その声が聞こえていたらしい。昂は一瞬、ちらりと紗由美を見たが、また目線を前へと戻して「何で」と、低い声で訊いた。
「いつも、バニラの匂いがしてるからさ…」
何でなのだろう。
何故、こんなにも気になるのだろう………
紗由美は、そう思っているのだけど、訊くことをやめない。
昂は驚いていたが(それも一瞬だったからみんな気付いていない)、それでも紗由美を見ずに
「……悪い?」
と、明らかな怒気を含んだ声で、言った。
そんなに怒ることを言ってしまったか、と内心ビクッとしたが、
「悪くなんてないよ!!人それぞれだし、私も甘いの好きだよ」
そう言って、ふわりと笑った。

