「…はよ」 面倒くさそうに溜め息を吐いて、昂は言った。小さな声で、ボソッと。 その瞬間、ふわりと甘い匂いが漂う。 「あ、バニラ…」 それは、甘いバニラの匂いであり、バニラが大好きな紗由美はすぐさま食い付いた。 昂は、無言でブレザーのポケットに手を突っ込んだ。 その時、ガサガサと、なにやら袋が摺り合わさる音がした。 昂は、ポケットの中ら手を出して、何かを紗由美の前に突き出した。