俺と葉月の四十九日

「バイト終わったら、待ってるからさ」
「うん」


俺も…少し素直になれよ。

深呼吸。
そして…安田を見つめる。


「…帰ろうな、安田」
「え?」
「待ってるから、一緒に帰ろう」


安田は瞳を見開いた。

口まで開いてるし。

そりゃそうか…一緒に帰ろうなんて言った事ないかもしれねぇ。



圭ちゃん、一緒に帰ろ!


昔からそれを言うのは安田から。
俺はいつもかったるそうに、それに応じていた。
俺からなんて無かった。


なら、俺から言ってもいいじゃねぇか…。


約束、させてくれよ。


最初で最後でいい、俺から約束させてくれよ、葉月。


「何?いつもの圭ちゃんじゃない」
「いつものって何だよ」

そういう事言うな。


「でも初めてだね?圭ちゃんがそんな風に言ってくれたの…照れるけど嬉しい」


安田は笑い、瞳を伏せた。

その照れた笑顔に、今更愛しさを感じる。


もっと早く言えば良かったな。
こんな簡単な言葉…俺はずっと言うのをためらってた。


違うか…安田に頼っていたんだ。
あいつから言うから言わなくてもいいなんて。


言わなくていいなんて理由は無いのに、変な虚勢張ってたんだ。