俺と葉月の四十九日

隠れたのはいいが、錆びた扉がきつく閉まってしまい出られなかったらしい。


見つけた時、安田は砂と埃まみれで、狭い空間の中で膝を抱えてた。

扉をこじ開けた俺を、安田は涙で真っ赤に腫れ上がらせた瞳で見た。


それでもあいつは笑った。
笑って…見つかっちゃったと言った。

呆れるくらいの強がりを平気で見せる奴だった。

ホントは心細くて仕方なかったくせに…泣きながら隠れていたくせに…馬鹿な奴なんだ。

ホント…素直じゃない女なんだ…。


その後、門限破りで互いの母親に叱られる中、安田はずっと俺の手を握りしめていた。

叱られているのに笑って…小声で…見つけてくれてありがとうって…。

聞き間違いかと思うくらいの小さな声で。

今も…安田は隠れんぼをしているんじゃねぇか。
泣きながら、どこかに隠れているんじゃねぇか。

見つかっちゃった…って、また涙目で笑うんじゃねぇか。

そう思えてならない。

変わってないから。
あいつはガキの頃から変わってないから。


「…ブル田には悪いと思う…けど捜してぇんだ。黙って待てる程時間はねぇ」

ガキの頃みてぇにまた明日なんて…安田にはもうねぇんだ!