結局、学校につくまで篠原龍斗が追いかけてくることはなかった。
良かった良かった。ほんと一安心だ。
はあっとため息をつきながら自分の席につくと、愛香がパタパタと駆け寄ってきた。
その表情は鬼のようで。
「ちょっと!昨日の…!」
「うわわっ、ちょっ、ばか!」
恐ろしい剣幕で明らか昨夜のことを言おうとした愛香の口を慌てて塞ぐ。
昨夜。
まさに愛香との電話中に、あのバカ(篠原龍斗)は部屋に乗り込んできたわけで。
あいつの声が聞こえた上に突然電話が切れて、何が何だか分からない愛香が今日、あたしにせまるであろうことは昨日から分かっていたこと。
「あとで言うからっ!今はほら、ね。皆いるし」
「……絶対だからね」
「分かったからその鬼みたいな顔やめて」
「疲れきった老婆みたいな顔した雪菜に言われたくない」
「アンタねえ!」
まあたしかに、ここのところ誰かさんのおかげで疲れることばっかだったから。
…老けたのかな、あたし。まだピチピチの高校生なのに…。
そんなことを考えていたあたしの頭に。
突然ズシリとした重みがかかった。

