「な……」



突然のことに頭がついていかなくてぽかんと口をあけるあたしの視界に、ひょいと篠原龍斗の顔が映り込んでくる。


その顔はいつかのように意地悪く楽しげに歪んでいた。


…その表情に良い思い出は、ない。



「すげーマヌケな顔」


「な、何すんのよ」


「さあ?押し倒したって言うんじゃね?こういうの」


「押し倒したってあんた…ふざけないで」



篠原から顔をそらして体を起こそうとするが、肩を押されて再び簡単にベッドに倒される。


力じゃ対抗できなくてキッと睨み付ければ冷ややかな目が返ってきた。


あたしの顔の横にはいつのまにか腕の肘から下が置かれていて、顔も近い。


今さら、危険信号。



「…しの、はら」


「お前学習能力ねえの?」


「は、」


「俺はアンタじゃねえ」



低い声で、じっとあたしの瞳を見つめながら言う。


その真剣な表情に心臓が早くなる。


緊張のせいか、恐怖のせいか、それともまた別のなにかのせいか。



「…もちろん篠原でもねえし」


「し、篠原じゃん」


「そういうこと言ってるんじゃねーだろ」



ぐっと。

顔が近付く。