「…勝手に入ってこないでよ」
「ノックしたのにお前が気付かねえからだろ」
「携帯返して」
「…っせーな。言われなくても返すっつの」
ぽいっと先ほど取られた携帯を投げられる。
扱い乱暴だし。
電話切れてるし。
……最悪。
「お父さんとお母さんは?」
「テレビ見てる。笑い声聞こえてくんだろ」
「…ほんとだ」
耳をすますと居間の方から笑い声が聞こえてくる。相変わらず声でかい。
篠原龍斗はそんなあたしの呟きを無視して、ベッドにバタリと倒れこんだ。
「ちょっと!あたしのベッド」
「はああー…まじ気ィつかう。疲れた」
「………」
「久々すぎてどんな口調で話したらいいのかとか分かんねえんだけど」
そういえばうちの両親と話す篠原の口調…敬語になったりなんかあやふやだったかも。
普通に喋ってると思ったら、こいつなりに悩んでたのか。
そう気付いたらなんだか篠原龍斗が可愛らしく見えてしまって。
「ぷっ」
つい笑いが漏れた。

