自室に戻って。
することがないあたしは、色々ぶちまけようと愛香に電話をかけた。
無機質な呼び出し音がしばらくなり…ブツッと途切れる音。
『もしもーし?』
愛香のだらけた声に、何故かほっとした。
「あたしあたしー」
『いやわかるけど。なに、おれおれ詐欺?切ってい?』
「どんだけ冷たいのアンタ」
『はは、嘘だよ~。どしたの?』
すこし心配の色を含ませて聞いてくる愛香。
さっきの言葉とはえらい違いだ。このツンデレめ。
「もー超つかれた」
『だからなんなのさ?』
「うちの両親ありえない」
『なんで』
「娘のこと完全ムシで龍斗くん龍斗くんって」
『ああ…篠原くんね』
「あんまりムシされるもんだから泣きそうになったわ」
瞬間、愛香が笑い声が耳に響いて思わず携帯を耳から遠ざけた。
しばらくしてまた耳に当てるとヒイヒイ苦しそうな声。
「いつまで笑ってんの」
『だって~!は、腹いた、ぶふっ』
「………」
また笑いだしたし。
呆れつつ愛香の笑いが治まるのを待っていると、携帯が手からすっと消えて。
「客来てんのに部屋籠って電話かよ」
背後から、聞きたくない、奴の声がした。

