(やっば……!)



何故だかバレちゃいけないと感じて、余裕な微笑みを浮かべて周りに目線を巡らせる彼から顔を俯いてそらした。


別にやましいことは一切ないんだけども…!


なんとなく、バレるのが嫌だった。気まずいというか、なんというか。


とにかく嫌なのだ。



「篠原龍斗です。実は小さい頃にもここに住んでたんだけど、色々変わってて道もあやふやです。またここらへんとか案内して下さい」



きちんとした挨拶。

最後のとびきりの笑顔。

…かっこよくなったんだなあ。

声変わり、したんだ。


当たり前のことなのにすごく違和感。


そんなことをぼんやり考えてハッとした。


やばー、今見つめちゃってたかも。意識なかった。


そんなあたしのすぐ後ろの席からは「超かっこよくない?」なんて話し声。



…そんな彼の席は、あたしの席から随分離れた窓際の1番前となった。