幸い先ほどの愛香の大声は誰にも聞こえなかったようだ。
再びあたしたちは声を顰めて話し始めた。
「話さなかったのは反省してる。ごめん」
「いいよ別に、からかっただけだから。そんくらいで怒らないって恋人じゃあるまいし」
こいつ……っ。
「…ま、まあとにかく。誰にも話さないでよ?」
「言われなくても分かってるよ」
「ならいいんだけど」
「そのかわり何か発展があったら教えてよ」
「………」
いかにも「興味あります」な愛香を一発殴って、あたしはスカートを払いながら立ち上がった。
そろそろチャイムもなりそうだ。
隣で愛香も殴られた頭を押さえながら立ち上がった。
「そろそろ教室戻ろ」
「あとで倍返し」
「…ぷ、やれるもんならね」
そしてあたしたちは顔を見合わせて笑い合った。

