「はあっ…はあっ…!」
息を途切れさせながら登場したあたしに、教室にいたみんなは何事かとこちらを見た。
だけどあたしだと分かると何事もなかったかのようにまた会話を始める。
…こういう時の居心地は最っ高に悪い。
「あー…だる」
正直な気持ちを吐きながら席に座ると、前の席に座ってスタンバイしていたらしい愛香がくるりとこちらを振り返った。
笑顔が怖い。
「お、おはよー愛香さ」
「挨拶なんてしてる場合じゃないでしょーゆ、き、な?」
「……そうですね」
悪魔だああ!
目の前の悪魔が笑ってる!
「ちょっと篠原くんと知り合いってどういうっ」
「しーーっっ!言うから大きな声出さないでってば!」
「あ、ごめ……じゃなくて!だからどういうこと?」
「あたしは平和な日常を過ごしたいの。女の嫉妬で恨まれるような日常はごめんだから」
そう。
あんな奴と関わったら絶対に、恨まれる。
認めたくはないけど奴は本当に容姿だけはすごいから…。

