「っいい加減にしろよ!」


「ぅわ、」



どん、と鈍い音を立てて両肩を近くの壁に押し付けられた。


痛みを堪えながら閉じていた目をあければ、真剣な表情であたしを見下ろす篠原龍斗。


その冷たい目に背中がぞくりとした。



「や、…やめてよ…離し」


「離さねえよ?お前逃げるし」



そう言って篠原龍斗は口の端をわずかにあげる。


…こわい。



「なん…なの…。昨日、あんなこと、しておいて」


「あんなことって?」


「っ……」



ファーストキスだったのに。

初めてだったのに。

こんな奴に、奪われてしまって。


泣くもんか。

こんな奴の前で泣くもんかっ。



「あんたなんかっ…大嫌いだもん!」



あたしは思いっきり篠原龍斗の胸を押して、その手から抜け出した。


そして一気に学校まで駆けた。


意味不明な、わずかな胸の痛みを感じながら…。