「それで」
「はい?」
「それで君は、洗濯が好きか」
 おれは返答にいささか困ってしまった。洗濯に好きも嫌いもない。必要だからやるだけだ。
「強いて言うなら、少し面倒です。ですから、好きではないのかもしれない」
「そうか、面倒か」
「はい」
「しかしね、君が悪いのだ」
「はい?」
「面倒だと思ってしまうのは、洗濯物を溜めてしまうからだ。頻繁に洗濯をすれば、習慣化して、やがて生活の一部になる。君は洗濯を1週間に1度と決めているね」
「まあ、洗濯物が溜まるペースがそれくらいですので」
「それじゃいけない。汚れたものは放置しない。すぐ洗う。洗濯を、君は週に1度の大仕事のように思っているのではないか」
「いや、大仕事ではないですけど、言われてみればそんな気もしますね」
「そう、思っているふしがあるのではないか」
「そう、思っているふしがあるかも知れないです」
「そう、思っているきらいがあるのではないか」
「そう、思っているきらいがあるかも知れないです」
「だから、これからはもっと頻繁に洗濯をしなさい、食事が面倒でないのと同じように、歯磨きが、お風呂が面倒でないのと同じようにだ」
「まあ、食事も歯磨きもお風呂も僕は少し面倒だと思いがちですが」
「思いがちなのか」
「思いがちです」
「そうか、ではそれも改めたまえ」
「はい」
「じゃあ、もう行くよ」