駅から高校までは湾岸の国道を二本もまたぎ、
高速道路をくぐり抜けたところでようやく見えてくる。

歩くには少し遠すぎるので、
自転車通学の友達を見つけては後ろに乗せてもらう毎日だ。

今日もいつも寄るアワビ商店で孝(こう)を見つけた。
孝は同じクラスでバスケ部のキャプテンだ。

僕ら体育会系はパンを一つ買って行かないと昼までもたない、
朝夕はここに寄るのがいつしか日課になっていた

買い物を終えて孝の自転車の荷台にまたがる。
バスケ部である彼の脚力は凄まじく強く、その運転は半端じゃなく安定し乗りやすい。

あっという間に校内の駐輪場に着いた。
「サンキュー」と僕は軽く手を挙げ、一足先に一人教室へ向かった。



廊下を歩いていると隣のクラスの梨華が声を掛けてきた。
梨華は一年で同じクラスだったが、
何故か僕とはウマが合い、いつからか毎朝廊下で立ち話をするようになっていた。

真面目でちょっと変わった女の子で、お世辞にも可愛いとは言えないが、
僕にとっては妹のような大切な存在であった。
周りからは付き合っているように見えていただろうか。

「どうしたの?」
「今日はあんまり話さないね」
そう、いつもの僕は梨華とはよく話す。
所謂、僕はおしゃべりになるようだ。

「中米くん元気ないけど大丈夫?」と梨華
「あ、あぁ。疲れてるのかなぁ」
「無理しないでね、今日も部活でしょ」

こんな梨華の小さな気遣いが、彼女といる居心地の良さだと感じていた。


二人の会話の隙間に始業のチャイムが割り込んできた


「あんっ!鳴っちゃったね」
「うん。」
「じゃぁ、またあとで」