「その時からあたしは恵司に夢中だょ」
「だから、逢いたくて逢いたくて、どうしたらいいかわからなくて」
「サイン帳にあった本屋さんに何度も何度も行ってみたの」
「それは前にも言ったよね」
「どこがいいなんて理屈じゃなく…」

「ただ逢えなくて、恵司の事を考えると胸が痛くなるの」(ぁ、僕も同じだ…)


「ゴメン。」

「なんで謝るの?」

「うぅん。なんとなく」

「あたしね、一生懸命バレーやってる恵司が好きだから、
デート代くらいはあたしが出せればいろんなとこたくさん行けると思って…」
「でもお金のために恵司との時間がなくなっちゃって逆に逢えなくなってすごく不安だった」
「だって恵司、もてるし…」

「オレ、ぜんぜんもてないよ」

「恵司がそう思っているだけで、あたしの周りはみんな言ってるよ」

「でも、信じてるから…大丈夫。」「だよね?」

言葉がなかった…

彼女のの顔から笑顔が消え、淋しそうで悲しげな表情になった

「オレ…理未子の笑った顔が好きだよ」
「今みたいな悲しい顔は辛い…」

「だから…ゆるして」(ごめん…)

彼女は僕の言葉に顔を上げた。

今にも涙がこぼれそうな笑顔に、
僕はそっと唇を重ねた。

溢れ出る涙の分だけ僕は
罪の意識に苛まれていた

何度も何度も唇を重ねても、
彼女の涙がとまらない。


まるで雨の雫のように…


いつしか二人は眠りについていた。

どれくらい経っただろう。

部屋の中はいつの間にかお互いの顔の凹凸がわかるだけの明るさになっていた。

横たわる彼女の視線を感じた。

夕焼けに照らされて紅く染まる彼女の頬は
少し目のあたりが腫れていたが
優しい笑みを浮かべていた。

僕は大切なものを見つけた事を感じた。