俺は白雪のスピーチは一切耳に入らなかった。
壇上でスピーチするのは、あの『ゆき』だったのだ。
あの日見せた赤い顔でもなく、無機質な表情でもなく、それでも紛れもなく彼女であった。
あんなに会いたいと願った彼女が目の前にいるのだ。






「先生?どうしました?」



「え…あ、俺彼女に会ってくる」


「やっぱり彼女に惚れたんですか?」



「…違う!!」




慌てて言い訳をしながらも控え室へ向かう。
スピーチをして少し時間が経っていることもあり、早足で歩みを進める。