昔、天皇になって間もない頃。



場内にはある噂が飛び交った。



それは、一国を揺さぶる程の強大なもので。



『天皇様が農民と恋仲らしいわ!』



そんな噂は瞬く間に城中に広まり、天皇である我にとって居心地が悪いものとなった。



「暇な貴族共め…」



廊下を歩き進めながらぽつりと呟く。



歩き進める度に聞こえるひそひそとした声。



自室に戻るまでの通路が果てしなく長く感じた。



天皇という、偉大な位についたことは誇りであろう。しかし、それには当然のように代償がつく。



己の…自由がなくなってしまうということ。



用足しにも、散歩にも…必ず誰かが横にいる。



そんな生活は我にとって息苦しいものでしかなかった。