そう…感情的な父様を見た事なんて一回もない。



父様はどんな事があっても、常に冷静で怒鳴ることはあってもこんな風に…感情的になるとこなんて私は見たことも聞いたこともなかった。



そんな父様が今。



私を腕の中におさめ、震えている。



「父…様…?」



ゆっくり静かにそう呟くと父様の身体が僅かにビクついた。



そして…



「己より…身分の低いものと、恋仲になっては幸せになることはない。あるのは…底知れぬ絶望なのだ…。」



そんな事を言う父様。妙な言い種に聞こえるのは何故だろう。


ただの私に対する注意には聞こえない。



例えるなら…そう。



自らが体験したような…。